3.
テストが終わった。午前中で終了した学校、昇降口から出たところだった。
「――先輩っ!」
明るい音が聞こえた。それが自分に向けられていることが分かった。眩しいくらいの笑顔がこちらに向かってくる。
「ああ…。」
「ああ…じゃないですよっ!先輩、今日は部活来るんですか?」
「ん…ああ。」
「そうですか!良かったです!」
嬉しそうな顔が隣に並ぶ。
「先輩はテストどうでした?」
「まあまあだったと思う。」
「私、今回は自信あるんですよ?」
彼女は意気揚々に告げる。
口元をなぞる。相変わらず元気な子だ。見ているこちらまで明るくさせる、そんなものを新田千穂は持
2013年09月15日 12:13
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「次の予定は?」「十二時十分から経団連会長との食事会、十二時三十分から厚生省の査察。五時から国際フォーラムで演説会があります。」「...食事会は十分遅れようか。」「分かりました。」「......なかなか様になってきたじゃないか。」彼は言う。視界の隅、バックミラー越しに表情が窺える。満足気だった。気分良さ気に外を眺める。「私の目に間違いは無かった。そうだろう?」それが俺に向けられているものだと自覚する。「どうでしょうか。」「ふふ...お前はそれで良い。」相変わらず外を眺めたまま、彼は笑う。 四年が経った。あれから四年、俺は田所健二の私設秘書として今まで働いている。その後の学校生活はごく
2020年07月19日 09:05
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一人の男がいた―――。自分の親に裏切られ、兄弟に裏切られた。それでも彼は登りつめる。彼は圧倒的劣勢を覆した。彼は自らに対する度々の謀反を許した。彼は自身の正義に対して厳格だった。彼は必要なら女子供までも殺した。そして、彼は神になることを望んだ。崇め、奉られることを。何故だろうか―――。私には理解できない。人の分際で、何故神になれるのだろうか。所詮、人は人であるというのに。雨は止まない。自室、今までずっと置き去りにされていた彼の論文が目に入る。こんな時に何故、俺は読みたい衝動に駆られるのだろう。彼の名残をそっと手に取る。現人類のルーツとマナの正体 2013,9,10ダニエル・ショシャン
2020年07月19日 09:15
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