記事のアーカイブ

WORLD -10-

山ケ野竜也はごく普通の家庭に生まれた。 父親はサラリーマン、母は専業主婦のありふれた家庭だ。彼は両親からそれなりの愛情を注がれていたと自覚している。一人っ子で少し甘やかされもしたかもしれないが、その愛に溺れてしまうことは無かった。それは彼の気質がそうさせたのかもしれない。 小学生になると、彼はたくさんの友達を作った。誰とでも良く遊び、慣れ親しんだ。他より小さかったけど、ケンカも強かった。彼がいれば理不尽なんて起きなかった。彼がそれを許さなかったし、何よりみんなの事が好きだったから。みんなの良さを知っていたから。 彼はみんなの為に生きていた。   中学に入ると、彼はいじめにあった。 &
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WORLD -9-

「次の予定は?」 「十二時十分から経団連会長との食事会、十二時三十分から厚生省の査察。五時から国際フォーラムで演説会があります。」 「…食事会は十分遅れようか。」 「分かりました。」 「……なかなか様になってきたじゃないか。」 彼は言う。 視界の隅、バックミラー越しに表情が窺える。満足気だった。気分良さ気に外を眺める。 「私の目に間違いは無かった。そうだろう?」 それが俺に向けられているものだと自覚する。 「どうでしょうか。」 「ふふ…お前はそれで良い。」 相変わらず外を眺めたまま、彼は笑う。   四年が経った。 あれから四年、俺は田所健二の私設秘書として今まで働いている。その後の学
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WORLD 5~8

3.       テストが終わった。午前中で終了した学校、昇降口から出たところだった。 「――先輩っ!」 明るい音が聞こえた。それが自分に向けられていることが分かった。眩しいくらいの笑顔がこちらに向かってくる。 「ああ…。」 「ああ…じゃないですよっ!先輩、今日は部活来るんですか?」 「ん…ああ。」 「そうですか!良かったです!」 嬉しそうな顔が隣に並ぶ。 「先輩はテストどうでした?」 「まあまあだったと思う。」 「私、今回は自信あるんですよ?」 彼女は意気揚々に告げる。 口元をなぞる。相変わらず元気な子だ。見ているこちらまで明るくさせる、そんなものを新田千穂は持
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WORLD -8-

翌日は学校の帰りに事務所に寄った。 「失礼します。」 昨日と同様にドアをノックする。 「はい。…っと。錬君ね。」 出てきたのは中島さんだった。昨日とは明らかに印象が違う。 全く気付かなかった。あれは演技だったのだろうか。 「どっちも俺だよ。」 見透かしたようにそんなことを言う。 「…そうですか。」 「ああ。」 短い返事の後、事務所内に案内される。   「今後の事だけど、」 椅子に座ると、中島さんは切り出した。 「在学中はボランティアみたいな感じで、色々手伝ってもらうことになるかもしれない。所謂雑用なんだけど。」 「ええ。問題ないです。」 「その後の事はそれから決める。それでいいかな。
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WORLD -7-

悪魔というのは聖書を目にする、またはその内容を読んで聞かせるともがき苦しむという。 欧米にいるエクソシストという悪魔祓いの専門家たちは、人に取りついた悪魔を払うため、まず聖書を読んで聞かせて弱らせるらしい。   悪魔は何故、聖書を嫌うのか――。   聖書には世の真理が書いてあるからだ。そういう見解もあるらしい。実際にどうなのかは解らない。今では多くが改変され、その内容は原初とは程遠いものになっている。   ――ただ、仮にそれが本当だとすれば、悪魔は何を恐れるのだろう。一体、何が彼らを苦しめるのだろうか。       自宅に戻ると、相変
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WORLD -6-

 自宅に着くと夕飯の支度をする。自宅に着いた時には9時をとっくに回っていた。 「…いただきます。」 自らの作った料理を頂く。   叔父さんが帰ってきたのは11時過ぎだった。自分の部屋へ帰ろうとすると、玄関からガチャリと音がした。 「おお。ただいま。」 少し驚いたあと、顔が和らぐ。 「お帰りなさい。今日は遅かったですね。」 「ふう。ラスト一週間だからね。」 ネクタイを緩め、大きく息を吐く。 「来週まではもう少し遅くなるかもしれないよ。」 「分かりました。おやすみなさい。」 「ん。おやすみ。」 短い会話を終え、部屋へと向かった。       休日の朝、目を覚
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WORLD -5-

3.       テストが終わった。午前中で終了した学校、昇降口から出たところだった。 「――先輩っ!」 明るい音が聞こえた。それが自分に向けられていることが分かった。眩しいくらいの笑顔がこちらに向かってくる。 「ああ…。」 「ああ…じゃないですよっ!先輩、今日は部活来るんですか?」 「ん…ああ。」 「そうですか!良かったです!」 嬉しそうな顔が隣に並ぶ。 「先輩はテストどうでした?」 「まあまあだったと思う。」 「私、今回は自信あるんですよ?」 彼女は意気揚々に告げる。 口元をなぞる。相変わらず元気な子だ。見ているこちらまで明るくさせる、そんなものを新田千穂は持
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WORLD 1~4

WORLD                                                                                    
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WORLD 1~4

WORLD                                                                                    
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WORLD-4-

自宅に帰って一息、台所で水を飲む。   ……やりたい事、か。   大学に行ってまでやりたいことが俺には無かった。神について、世界についてなんて学びに行こうとは思わなかったし、何より自分で考えなければ意味がないと思っていた。それに大学なんて初めから論外だった。   自室に戻り、ベッドに横たわり目を閉じる。少女も同じく隣に寝転ぶのが解る。     「――――――――。」 「――――――――。」           彼女の頭を撫でた。   驚いた。目を開けると、彼女はいつも通り何を考えてるの
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